Research

先進複合材料は比強度・比剛性といった機械的特性において、従来の構造材料に比べはるかに優れているため、 多くの工業分野への適用が急速に広がっている。例えば現在開発中の次世代旅客機においてはCFRPを二次構造だけ でなく胴体や主翼といった主要構造へ適用することが計画されている。環境問題が契機となり、自動車への適用 拡大も予想される。また、宇宙分野においても、ロケットエンジンのノズルにCMCが、宇宙往還機においてはC/Cが 利用されている。このような傾向は、ここ数十年にわたり新素材として開発されてきた複合材料が構造材料として 十分に成熟しつつあるという背景がある。これに伴い、複合材料における研究課題も“いかにして作るか”から “いかにして使うか”という新しい段階を迎えつつある。

さて、複合材料の実構造への適用を考えるとき、古くから言われ、未だに重要な検討課題に“複合材料はいかに して壊れるのか”がある。金属やセラミックスといった均質材料に比べ複合材料の破壊プロセスは極めて多様である。 それゆえ、均質材料において確立された破壊力学・損傷力学の単なる転用では正当な評価が行えない。従って、 複合材料の損傷解析は均質材料と別個に、独自の変遷を経て発展してきた。

しかしながら、近年、この複合材料の損傷解析の分野における研究動向において大きく2つの傾向が顕著となって きた。1つには、実験事実に基づき、対象となる損傷を絞り込んだうえで、“微視的な損傷には破壊力学を、巨視的な 損傷には損傷力学を適用する”というアプローチが数多く見られるようになったことである。これは金属やセラミックス といった均質材料の破壊・損傷解析で活躍してきた研究者がその知識を複合材料の破壊・損傷解析に活かす環境が整備 されてきたということに他ならない。もう1つには、コンピューターの発展に伴い、複合材料内部の損傷を直接 シミュレート出来るようになってきたことである。このことは、従来、実験で断片的にしか見ることの出来なかった 損傷プロセスを、コンピューター上でより詳細に見ることを可能とし、複合材料関係者だけでなく、従来の構造材料に 慣れ親しんでいる設計・開発者にとって、“安心して複合材料を使うため”の重要な知見の提供につながっている。 また、コンピューター科学者が複合材料研究に本格参入する土壌が出来たともいえる。以上の2つの傾向は複合材料の 損傷解析がより学際的な分野として発展しうることを示唆している。

本研究室では、これらの背景に基づき、今後さらに航空宇宙分野での利用拡大が予想される繊維強化複合材料の 特に破壊と変形に焦点を絞り、日夜研究に取り組んでいる。

※最近の研究については、「材料・構造スマートシステム学分野の紹介」(2020年6月2日)をご覧ください。

※研究室での研究の進め方についてまとめた リーフレット(第6版 2019年5月7日)です。本研究室への進学希望の
  学生さんは是非参考にして下さい。


東北大学サイエンスカフェ「次世代航空機への挑戦 ~航空機開発の最前線~」




セルオートマトンを用いた航空交通流シミュレーション








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